第44回日中学生会議 分科会
日中学生会議の魅力の一つは徹底的な対話であり、そのために分科会を設置をしております。 本会議前に約1か月間の事前準備を経て、日中両国の学生が分科会に分かれて議論を行い、本会議最終日の最終報告会にて、議論内容を発表する形を取っており、各分科会は8−10人で構成されます。 参加者は各自の興味や使用言語から 1つの分科会に所属することとなりますが、第44回の分科会テーマは以下のようになります。応募時の参考にしてください。 教育 主な使用言語:中国語、日本語 日本と中国はともに「詰め込み教育」と称される教育スタイルを採用してきた。知識量の多さや基礎学力の強化には有効である一方で、創造性の育成には課題があった。しかし、近年、両国とも教育改革を進め、より創造的な人材育成を目指している。日本では「個別最適な学び」や「協働的な学び」の推進により、生徒の主体性や創造力を引き出す教育を強化している。他方、中国では「双減政策」により過度な詰め込みを抑え、「素養教育」を推し進めている。さらにデジタルを用いて、教育格差を無くそうとしている共通点もあるが、中国では思想教育を強めているなど違いも見られる点が興味深い。受験競争の激しさが創造性育成の障壁としてある中で、知識の詰め込みと創造力の育成をどう両立させるかは、今後の日中両国の教育改革における重要な課題といえる。日中の教育の共通点と違いについて議論をしつつ、両国の教育システムがどのように変化していくかを共に考えていく。 メディア 主な使用言語:日本語、英語 日本と中国のメディアは互いに影響を与えながら発展してきた。本分科会では、「日本と中国のメディアの比較と相互影響」をテーマに、娯楽メディアとニュースメディアの2つの視点から議論する。 娯楽メディアでは、日本のアニメ・ゲームが中国エンタメ産業の形成に与えた影響や、中国独自の進化を遂げた作品の逆輸入による「共創」の可能性を探る。また、文化記号の翻訳や持続可能な創作の構築についても議論を深める。 ニュースメディアでは、日中の報道が時に「架け橋」となり、時に「障壁」となる現状を分析し、報道の偏向やナラティブの違いが世論に与える影響を考察する。中立的な報道のあり方や、メディア対話の可能性を探ることで、相互理解の促進を目指す。 ジェンダー 主な使用言語:日本語、中国語 日本のジェンダーギャップ指数は116位、中国は102位と、両国ともに低い順位にある。日本と中国では、特定の職業や家庭内における男女の役割、アニメ作品が描くジェンダー像、服装や容姿に対する社会的期待が異なる。本分科会では、職業、アニメ、服装や容姿の観点から、社会に根付くジェンダーに基づいた固定観念やジェンダーバイアスを考察する。 両国の学生が議論を通じてジェンダー格差の実態を理解し、両国の優れている点をお互いに参考にしつつ、格差是正への道を探る。 アイデンティティ 主な使用言語:英語 本分科会では、日本と中国のアイデンティティ形成に注目し、それが国際協力にどのように影響を与えるのかを議論する。日本と中国は東アジアに位置しながらも、文化的・歴史的な違いが多く、それぞれ独自のアイデンティティを形成してきた。両国の価値観はどの点で共通し、どのように異なるのか。また、それらの違いが相互理解や協力にどのような影響を与えてきたのかを考察する。 さらに、日中のアイデンティティがアジア全体の枠組みでどのように適応できるのかを探る。政治・経済だけでなく、教育や文化交流、若者同士の相互理解の観点から、国際協力の可能性を検討する。特に、歴史的な対立や価値観の違いを乗り越え、共通の課題に対してどのように協力できるのかを、事例やデータをもとに議論する。 本分科会を通じて、日中両国のアイデンティティの相互理解を深め、それをアジア全体の国際協力の基盤として活かす方法を模索する。 平和 主な使用言語:英語 2025年、世界は第二次世界大戦終結80周年を迎えます。それは日中両国も例外ではありません。この80年、2つの国家は日中国交正常化に始まり、平和と友好、安定を目指して共に歩みを進めてきました。その歩みは、私たちをどこに導いたのでしょうか?また、今後私たちをどこへ導くのでしょうか?平和分科会では、先の大戦の記憶にも触れながら、80年の歩みを振り返り、きたる戦後100年、未来の日中関係を描くことを試みます。 食文化 主な使用言語:中国語、日本語 グローバリズムと産業化の波が押し寄せる中、日中両国の食文化は歴史的な継承の岐路に立たされている。千年にわたり食の対話を重ねてきた両国は、茶道や節句菓子をはじめとする文化を通じて、「食に道を宿す」という精神を共有してきた。中国・北魏時代の農書『斉民要術』に記された古代菓子「粔籹(きょじゅ)」の技法が、日本の和菓子へと発展を遂げたことや、寿司文化がシルクロードを経て各地域の特色を取り入れてきた事実は、食文化が持つ越境的な遺産としての価値を示している。 しかし、現代の食品産業の発展は効率性を追求する一方で、文化の希薄化を加速させている。調理済み食品の画一化は手作りの温もりを失わせ、食品添加物は伝統的な味覚体験を変容させている。さらに、若年層の間では「家庭の味」への理解が乏しくなりつつある。 食文化分科会では、食品工業化の潮流の中で、日中両国の食文化をいかに継承するかを探り、技術と歴史的価値の調和点を模索する。